「大学で何を学ぶか」
学生&教員座談会
国際化が進み、人々の価値観が多様化する時代。我々は大学で何を学ぶべきなのか。
人間社会学科の飯山昌弘、地域福祉学科の大島道子両助教授と、4年生の伊津野ひかりさん(地域福祉学科)、寺尾裕子さん(人間社会学科)の4人で、話し合ってもらいました。(司会は、新聞部・鈴木淳博)
相互コミュニケーションのある授業が理想(寺尾さん)
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寺尾裕子さん (人間社会学科4年)
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―アンケートでは、学生の授業態度について取り上げました。授業中の私語についてどう思われますか。
伊津野「話が分からない時には、友達に聞くために話をすることはあります。関係の話は気になるから、周りにいる友人を注意することもありますね」
寺尾「私は、あまり私語は気にならないけど、後ろの席にいるとやっぱりうるさいと思う」
大島「私は、私語は授業に関するものだと思っています。ただ、新入生は90分授業に慣れていないから、50分経つと確実に集中力が切れる。そうした時は、体を動かしてもらうなどして工夫しています。怒るっていう発想はないですね。教員側には、注意するというより工夫する努力が必要だとは思います」
飯山「大体、授業を受けに来ているのに、私語をするっていうのは、自己矛盾ですからね。この場は何をする場なのか、テーマを明確にすることが大事だ。授業って本来、『なぜ?』で始まって、『なるほど!』で終わらなきゃいけないものでしょ。この連続がないと授業は成り立たちません」
寺尾「教員と学生の間に相互コミュニケーションがある授業が理想です。それが成り立たたないまま終わる授業はきつい。でも、授業そのものは全てマイナスになるものはないと思います」
伊津野「人数が多い授業ほど、相互コミュニケーションがとりにくくなって私語が増える。一方的な授業でも、その内容について自分なりに考えられれば、先生に伝えられなくてもコミュニケーションとして成り立つと思う」
飯山「大人数の教室でも、教員側が授業の雰囲気や空気を察知するアンテナを持っていれば、相互コミュニケーションのある授業は可能です。人が人に対して話す、授業はいわば“ライブ感覚”なわけですから」
「問題意識をもって物事を見るようになって欲しいです」(大島助教授)
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大島道子助教授 (地域福祉学科教員)
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―高校と大学では何が違うと思いますか
寺尾「高校生活では「〇〇をするんだ!」っていうのだけがかなり明確にあった。しかし大学に入ってそれだけでなく視野が広がったと思います。私の大学での目標が、それで達成できました。。自分に合うものを探していくうちに、徐々に選択の幅は広がりましたから」
伊津野「私は逆。『広く』よりかは『深く』勉強しています。入学して、保育学という専門的な学問を学び、やる気があって始めたわけじゃない科目だったけど、今は保育一本です。この学科で専門的なものを学べたことは財産です」
大島「地域福祉学科は専門職養成を中心にする学科です。実習もあって、本当に学生たちは忙しいと思う。ただし、資格を取るためだけの勉強は、大学における学問のあり方ではない。1回1回の講義ごとに、内容の本質が何であるのかを確認することが大事なんだと思います。常に問題意識をもって、時には批判的に物事を見つめられること、それができないと良い仕事はできませんよ」
飯山「資格が欲しいだけなら、専門学校でもいいことになってしまう。専門学校では学ぶことのできない総合的な人間力を、大学では教育していかなければならない。しかし一方では、専門学校的な教育にも答えなくてはならないのも現状です。それらが大学側にも学生の中にも明確に差別化できれば、良い教育・良い学習ができると思います」
「主体性のある学生が集まる大学なら、留年は恥ではない」(飯山助教授)
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飯山昌弘助教授 (人間社会学科助教授)
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大島「学生に一番聞きたいことは、目的を持ってのぞんでいるかどうかというところなんです。私の学生時代は、議論好きが多かった。授業に関しても、不満があれば先生に直接言って改善していこうとする殊勝な人たちがいましたよ」
伊津野「私も今の社会問題について議論をよくしますね。ただ、議論できる相手と出来ない相手がいる」
大島「議論することって学生の特権だと思う。自由な意見を言ったり、旅行したり…大学時代はどんなことでもできる」
寺尾「イタリアに2カ月近く放浪の旅に出て、単位を落として卒業できない友人がいます」
飯山「大いに結構。主体性のある学生が集まる大学であれば、留年は恥ではない。あてがわれた価値観ではなく、自分の価値観を見つけることが大事なんです。今の学生は自分が社会的にどんなに恵まれた自由な時間を与えられているかに気づいていない。それに気づけば、もっと生かそうと思うはずです」
大島「今の学生は知的好奇心が旺盛とはいえないんじゃないでしょうか。今はいい時代だから、インターネットで世界中のことがなんでも調べられるでしょ」
伊津野「私は、分からないことがあったら先生に聞いたり、本で調べたり、とにかく動こうとしますね。でも、そうしない人はたくさんいます」
飯山「モチベーションが欠けているんでしょうね。僕らが学生の頃は、上からも下からも好奇心をあおられるような刺激があった。今は本質的なことについて議論することが格好悪いように思えるんでしょうね」
「何でもやってみることが大切なんだと思います」(伊津野さん)
―これから大学で何を学んでいこうと思いますか。
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伊津野ひかりさん (地域福祉学科)
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寺尾「自分の知らない世界を知りたい。自分がどれだけ成長できたか、どれだけ自分に自問自答できるかを、いろいろな人と話すことでつかんでいきたいです」
伊津野「正直、大学3年生を終えようとしている今、後悔しているんです。時間の使い方によって何でもできる4年間だから、講義、ボランティア、アルバイトなど自分にとって可能性が開けそうなことは何でもやってみることが大切なんだと思います」
(鈴木淳博・河合悠美子・中村玲子)
【第4号 2005年04月05日】
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